8.29.2013

The Net Energy Cliff

現在のわたしたちの文明を支えるエネルギーの大部分を占める化石燃料は、まだまだ枯渇しないだけの量が地球にはあります。ただし、化石燃料を採掘・精製するためにはエネルギーが消費されます。人類が石油を使い始めた頃、地表のすぐ近くにある100リットルの石油を手に入れるのに必要なエネルギーは石油1リットルでした。100:1のレシオです。

採りやすい石油が減るに従って、このレシオは低下していきます。1リットル採るために1リットル使うのではそれはエネルギーとしての意味がもはやありません。1:1のレシオです。

この採掘コスト・レシオが10:1になったとき、「正味エネルギーの崖(the net energy cliff)」が訪れると言われています。根拠は、人間が口にする1カロリーのために、10カロリーのエネルギーが使われているという概算。栽培・飼育し、精製し、運搬し、調理するエネルギーです。場合によっては包装し、宣伝し、冷蔵するエネルギーです。

「ヒトの口に十分な食物を運ぶことが出来る」ということが我々の「文明」の本質的な機能であり、これが出来なければ文明の存続はありません。1カロリーの食物のための10カロリーのエネルギーは文明の存続のために絶対必要なのです。

問題は、そのレシオに我々が気づいていないこと、もしくは1:1の直前までネバれると思っていることです。10:1の崖はある日突然やって来ます。この危機に十分な準備が出来ていない社会(や国家)は、<化石エネルギーのうえに構築された旧システム> vs <文明の存続をかけて求められる新システム> という巨大な変換にさらされます。

現代の社会システムにおいて、この巨大なシステム変換に対応するために用意された手段は、せいぜいクーデターを含めた政権の交代や、利権サークル内部でのエコ改革にすぎません。

求められているのは、根本的なシステムの変換、価値の変換、そして「国家」という大きすぎるコミュニティー-ふんだんな化石燃料によってのみ支えることの出来た巨大サイズのコミュニティー-の解体かもしれません。

preview:http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_645_pre.asx

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