1.15.2014

映画『ハンナ・アーレント』に見る.. _04

感情の回復について

1.そもそも懲罰がなぜ存在するのか。仇討ちの貫徹という発想でないことは明らかで、次の3つが現在の法学・社会学にて語られる。

a. 被害者または被害者の家族の感情の回復
b. 共同体の理念の表明・貫徹
c. 犯罪または逸脱の抑止

2.上記のa.について、誤ってはいけないことは、回復されるべき感情は、被害者または被害者の家族のものであり、オーディエンスたる民衆のものではないということ。
被害者または被害者の家族が(または第三者である民衆が)自らも犯罪に手を染める形で報復を行うこと、さらにそのことによって起こり得る報復の応酬を抑止することの効果は、明らかに期待できる。

3.しかしここで提起されるべき問題は、被害者または被害者の家族が、その人間性の高さ故に、自らの感情の回復を懲罰の執行に依存しないケースがあり得るということ。
「コドモを殺された親の気持ちになってみたら、そんな理想論を口にできるのか?」という議論に対しては、

a. 自分はコドモを殺されていないからこそ、理性的な判断に基づいた議論が可能
b. 即時の議論を避け、まさにしかるべき時間を経て「感情の回復」を待ってから、理性的な議論を展開することが可能

という解が与えられる。


速度(スピード)がもたらす秩序の破壊について

a. 化石燃料の消費のうえに成り立つ文明の、化石燃料枯渇に伴う衰退の問題→問題の本質は、化石燃料に依存していることではなく、化石燃料が生成される時間と、これを消費する時間の圧倒的な差にある。
b. 遺伝子組換えがもたし得る、生態系における修復不可能な亀裂の問題→問題の本質は、遺伝子を組み替えることではなく、そのスピードである。生態系のホメオスタシスが対処出来るだけの十分な時間をかけて行う遺伝子情報の変化(品種改良など)は問題があるとしても、修復可能であり得る。
c. 生殖医療、あるいは出生前判断などの倫理的な問題について、そのスピード位が速過ぎるために、「なにが人間らしいのか」という本質的な問題が話し合われている時に、「なにが人間なのか」というノイズ的議論が介入してきてしまう。

という議論の軸を設けることが出来る。

ビデオニュース無料放送より。www.videonews.com/news-commentary/0001_3/003126.php

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